ボンジュール!
さて、今回はフランスの詩人ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)の詩「Déjeuner du matin(朝食)」でフランス語動詞の複合過去を学ぼうという回です。
複合過去は、過去の行為・出来事をあらわす動詞の時制で、「〜した」という意味でしたね。
この詩「Déjeuner du matin(朝食)」は、初級者にもわかりやすいとても簡単なフランス語で書かれており、初級レベルの動詞の複合過去形がたくさん出てきます。
ですので、複合過去の学習にうってつけ。
ぜひ、youtubeの朗読を聴きながら、この詩で複合過去の練習をしてみてください。
それでは、詳しくみていきましょう。
「Déjeuner du matin(朝食)」で学ぶ複合過去
「Déjeuner du matin」の原詩と翻訳
原詩は以下の通り。赤色で示した動詞が複合過去です。
Il a mis le café
Dans la tasse
Il a mis le lait
dans la tasse de café
Il a mis le sucre
dans le café au lait
Avec la petite cuillere
Il a tourné
Il a bu le café au lait
Et il a reposé la tasse
Sans me parler
Il a allumé
Une cigarette
Il a fait des ronds
Avec la fumée
Il a mis les cendres
Dans le cendrier
Sans me parler
Sans me regarder
Il s’est levé
Il a mis son chapeau sur sa tête
Il a mis son manteau de pluie
Parce qu'il pleuvait
Et il est parti
Sous la pluie
Sans une parole
Sans me regarder
Et moi j'ai pris
Ma tête dans ma main
Et j'ai pleuré
Jacques PRÉVERT (Paroles, 1945)
彼はカフェをそそいだ
カップの中に
ミルクをそそいだ
コーヒーの中に
砂糖を入れた
カフェ・オ・レの中に
小さいスプーンで
かきまぜた
カフェ・オ・レをのんだ
そしてカップをおいた
私に何もいわないで
彼は火をつけた
一本の煙草に
輪っかをつくった
煙で
灰をはたいた
灰皿に
私に何もいわないで
私を見もしないで
彼は立ち上がった
頭に帽子をのせ
レインコートを着た
雨が降っていたから
そして出て行った
雨の中を
何もいわないで
私を見もしないで
そして私は
手で顔をおおった
そして私は泣いた
いかがでしょうか?
それぞれどの動詞の複合過去が使われているかわかりますか?
以下では、(1)avoir+過去分詞、(2)être+過去分詞:移動をあらわす動詞、(3)être+過去分詞:代名動詞、の三つのタイプに分けて、この詩で使われている複合過去を説明したいと思います。
動詞の複合過去(1)avoir+過去分詞
基本的にフランス語動詞の複合過去形は助動詞avoirと動詞の過去分詞で作ります。
動詞の過去分詞はそれぞれの動詞で覚えなければいけませんが、一定の規則性があり、とりわけ、フランス語動詞の大半を占める-er動詞の過去分詞はすべて語幹+-éとなります(aimer→aimé)。
例えば動詞aimer(〜を愛する)の複合過去形は次のようになりました。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | j’ai aimé | nous avons aimé |
二人称 | tu as aimé | vous avez aimé |
三人称 | il a aimé/ elle a aimé | ils ont aimé / elles ont aimé |
以下は詩の中に登場するavoir+過去分詞の例です。それぞれどの動詞の過去形かわかりますか?
Il a mis le café dans la tasse
Avec la petite cuillere, il a tourné
Il a bu le café au lait
Et il a reposé la tasse
Il a allumé une cigarette
Il a fait des ronds avec la fumée
Et moi j’ai pris ma tête dans ma main
Et j’ai pleuré
mettre(〜を置く、いれる、着る)
tourner(〜をかきまぜる)
boire(〜を飲む)
reposer(〜を置く)
allumer(〜に火をつける)
faire(〜をする、つくる)
prendre(〜を取る)
pleurer(泣く)
動詞の複合過去(2)être+過去分詞 移動をあらわす動詞
フランス語動詞の中には、複合過去形に助動詞avoirではなく、助動詞êtreを使うものがあります。
中でも代表的なのが、以下の移動を表す常用動詞です。
resterは「移動ゼロ」、 naître(生まれる)は「この世にやってくる」、mourir(死ぬ)は「あの世に行く」と考える覚えやすいですね。
例えば、aller(行く)の複合過去形は次のようになりました。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | je suis allé(e) | nous sommes allé(e)(s) |
二人称 | tu es allé(e) | vous êtes allé(e)(s) |
三人称 | il est allé / elle est allée | ils sont allés / elles sont allées |
主語と過去分詞が性数一致する点にも注意が必要です。
詩の中でも一箇所、移動を表す動詞が使われていました。
Et il est parti sous la pluie
partir(立ち去る、出発する)
動詞の複合過去(3)être+過去分詞 代名動詞
最後に、いちばんやっかいな代名動詞の複合過去。
代名動詞の複合過去も助動詞にavoirではなくêtreをとります。
再帰代名詞(se)も変化するので活用はかなり複雑です。たとえば、se lever(立ち上がる、起きる)の複合過去は次のようになりました。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | je me suis levé(e) | nous nous sommes levé(e)s |
二人称 | tu t’es levé(e) | vous vous êtes levé(e)(s) |
三人称 | il s’est levé / elle s’est levée | ils se sont levés / elles se sont levées |
詩の中でもこの代名動詞の複合過去が使われていました。
Il s’est levé
se lever(立ち上がる、起きる)
複合過去vs半過去
Il a mis son manteau de pluie parce qu’il pleuvait
彼はレインコートを着た。雨が降っていたから。
どうして、il a mis(彼は着た)は複合過去なのに、il pleuvait(雨が降っていた)は半過去なのでしょうか?
理由はかんたん。「着る」という行為は一回きりのアクションであり、「雨が降る」という現象は問題になっている時点で始まりも終わりもなく持続しているアクション・状況だからです。
詩の解釈
このジャック・プレヴェールの詩「Déjeuner du matin(朝食)」はかんたんなフランス語で書かれていますが、その解釈はかんたんではありません。
たとえば、il(彼)とは誰なのか?je(私)とは誰なのか?
いちばんすぐに思う浮かぶ解釈は、ふたりは男と女のカップルで、この詩は2人の関係の終わりを描いたものだというものでしょう。それは大いにあり得ることです。
しかし、別の解釈も可能です。たとえば、je(私)は年齢も性別も指定されていません。ということは、私は、il(彼)の息子かもしれないし、父親かもしれないし、男の愛人かもしれません。女性であっても、娘かもしれないし、母親かもしれないし、妻かもしれないし、愛人かもしれません。
この詩はその単純さ故に、多くの解釈を可能にします。
とはいえ、今回のテーマはこの詩の解釈ではなく複合過去の学習なので、あまり難しく考えずに、みなさんの好きな解釈で勉強してください。
それでは、また。
À bientôt !
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