ボンジュール!
さて、今回はフランス語の参考書をレビューしたいと思います。
今回レビューするのは、フランス語入門者向けの幻冬舎新書『世界一簡単なフランス語の本 すぐに読める、読めれば話せる、話せれば解る!』(中条省平著、2018年刊)です。
世界一簡単なフランス語の本って、すごいタイトルですね。さて、どれだけ簡単なんでしょうか?
以下のレビュー記事では、本書をかんたんに総評してから、個人的に長所と短所だと思った点を挙げていきます。
総評
本書『世界一簡単なフランス語の本 すぐに読める、読めれば話せる、話せれば解る!』は、フランス文学研究者、中条省平先生によるフランス語入門書(幻冬舎新書)です。
中条先生といえば、フランス文学の古典作品の翻訳でその名前をご存知の方も多いはず。主な訳書に『狭き門』(ジッド)、『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ)、『肉体の悪魔』(ラディゲ)、『花のノートルダム』(ジュネ)などがあります。
ただ、結論から言うと、本書は「世界一簡単なフランス語の本」というわりにそれほど簡単な印象はなく、また単調なルールの説明が続くので、あまり大きな声ではいえませんが、読み物としてあまり面白くありませんでした。残念です。
長所
- 文学研究者による硬派なフランス語入門書
著者の中条先生はフランス文学研究者で、さまざまな古典作品の翻訳を手掛けたり、映画・文学・マンガ・ジャズ評論を書かれたりしている先生です。そんな文学者の先生によるフランス語入門ということで、やはり、語り口は知的でアカデミック。 - フランス語の読み方のルールが丁寧に理路整然と説明されている
フランス語の読み方のルールがいちから丁寧に説明されているので、この本を読んでルールを暗記すれば、だいたいのフランス語発音の仕方と初級文法がわかります。
短所
- 「世界一簡単」はいいすぎかも?
本書は「世界一簡単なフランス語の本」を謳っていますが、個人的にはそれは言い過ぎだと思いました。別の入門書に比べてとくに簡単だとは思いませんし、むしろ細かいルールの説明が淡々と続くので、結局、フランス語は七面倒クサイという印象を与えかねない…というのが私の率直な感想です。 - 読み物として退屈?
本書の個々のルールの説明はたしかに簡潔で分かりやすいと思いますが、ニュートラルな文体でルールの説明ばかり続くので、本書は読み物として少し単調すぎるかもしれません。読み方のルールや文法の解説以外にもう少し話を広げたり、読者の記憶を助ける配慮をしたり、もう少し何かやりようがなかったのでしょうか…。 - 文学・芸術に興味がない人にはつらいかも?
著者はフランス文学研究者ということもあり、どうもフランス語を「読み物」として捉えている節があります。本書の序で設定される学習目標は、「ルーブル美術館やオルセー美術館の絵のフランス語タイトルをだいたい理解すること」です。なぜかそこには人間とのコミュニケーションが想定されていません。さらに、フランス文化にはいろいろな側面があるはずですが、本書で言及されているのは過去のフランス文学作品と芸術作品ばかり…。現在のフランスの話として、「カフェ・レストランの給仕人は男の仕事で、彼らはそのことに誇りを持っている」という趣旨の話が出てきますが、現代フランスには女性の給仕人もザラにいますし、個人的には、特に男の給仕人が自分の仕事に男性的な誇りを持っているという風に映ったことは一度もありません。 - 例文が現実離れしている?
文法を扱うときも非現実的な例文は避けるべきだと著者は自ら言っていますが、本書の中には、「こんな文章、日常生活で(ほとんど)きいたことないけどなあ…」という例文がちらほらありました。たとえば、Je donne de l’eau à une rose(私は一輪のバラに水をあげる。ma roseとかmes rosesならもっと自然なんですが)を人称代名詞を使って→Je la donne à une rose. と書き換えていますが、この書き換えがかなり気持ち悪いと感じるのは私だけなんでしょうか?水はenで受けるのが自然な気がするし、その場合も、ma roseやmes rosesを使って、j’en donne à mes rosesと言った方がよりリアルだと思います(「コーヒーいる?うんちょうだい」は、Tu veux du café ? Oui, je le veuxではなく、Tu veux du café ? Oui j’en veux.)。
こういう人にオススメ
以上のことを踏まえて本書をオススメするのは以下のような方々です。
- 硬派なフランス語入門書を探している人。
- フランス語を読み物として学習したい人。
- コツコツとルールを覚えるのが好きな人。
以上、フランス語入門書『世界一簡単なフランス語の本 すぐに読める、読めれば話せる、話せれば解る!』をかんたんにレビューしました。
それでは、また。
À bientôt !
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