ボンジュール!
今回は「フランス語で本を読もう」の第3回目。
「フランス語で本を読もう」シリーズでは、ぼくが読んだ、あるいはこれから読む予定のフランス語の本をみなさんに紹介します。
ここでフランス語の本というのは、原書であれ翻訳であれ、フランス語で書かれた本のこと。ですので、カミュの『異邦人』も紫式部の『源氏物語』のフランス語訳もフランス語の本にカウントします。
ちなみに、このシリーズでは基本的にフランス語の本にまつわる個人的な意見や感想をしゃべるだけです。解題やレクチャーみたいなことはしません(できません)。
駄弁が功を奏して、読者のみなさんとフランス語書籍とのささやかな出会いの場になれば幸いです。
それでは、本題に移りましょう。
今回僕が読んだのは、フランス人作家ピエール・ルメートルのLe serpent majusculeです。前回ピエール・ルメートルのTrois jours et une vieを読んで面白かったので、ひき続きピエール・ルメートルを読むことにしました。

Le serpent majusculeは2021年に発表された作品ですが、書かれた順番で言うとこれがピエール・ルメートルの第1作にあたります(1985年執筆)。著者の前書きによると、ロマン・ノワールというジャンルへの「別れの挨拶」としてこの作品を出版することにしたそうです。書き直しはほぼされておらず、当時の原稿がほぼそのままの形で発表されました。
ちなみにロマン・ノワール(romain noir)というのは、アメリカのハードボイルド探偵小説に影響を受けてフランスで発展した小説のジャンルです。早い話、フランス版ミステリーですが、悪者や犯罪者が主人公になることが多いのが特徴です。
さて、Le serpent majusculeの舞台は1985年のパリ。かつてレジスタンスとして祖国のために戦い、戦争の後に殺し屋となったマチルドが主人公。耄碌して物忘れがひどくなり、任務を完璧にこなせなくなっていくマチルドの行く末が語れます。ただ、物語はマチルダの視点のほかに、マチルダの元同志で殺し屋組織の司令官アンリ、マチルダの事件を追う刑事ヴァシリエフなど、複数の人物の視点からも語られていきます。
個人的な感想を言えば、Le serpent majusculeはそれぞれのキャラクターの人物造形がしっかりして、特に前半は複数の視点がいい具合に絡み合ってとても面白かったです。後半ももちろん面白いのですが、前半に比べるとすこし物足りない印象を受けました。
物語の舞台は1985年のパリですが、スマホやインターネットがまだない時代のミステリーってシンプルでいいですね。
どんな話か気になる方は原書で読むか、あるいは翻訳も出ているのでそちらを参照してみてください。邦題は「邪悪なる大蛇」です。
それでは、また。
À bientôt !
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