ボンジュール!
今回は「フランス語で本を読もう」の第4回目。
「フランス語で本を読もう」シリーズでは、ぼくが読んだ、あるいはこれから読む予定のフランス語の本をみなさんに紹介します。
ここでフランス語の本というのは、原書であれ翻訳であれ、フランス語で書かれた本のこと。ですので、カミュの『異邦人』も紫式部の『源氏物語』のフランス語訳もフランス語の本にカウントします。
ちなみに、このシリーズでは基本的にフランス語の本にまつわる個人的な意見や感想をしゃべるだけです。解題やレクチャーみたいなことはしません(できません)。
駄弁が功を奏して、読者のみなさんとフランス語書籍とのささやかな出会いの場になれば幸いです。
それでは、本題。
今回僕が読んだのは、ベルギーの小説家Amélie Nothomb(アメリー・ノトン)の10冊目の小説に当たるCosmétique de l’ennemi(2001年刊)です。

アメリー・ノトンは(ノートンと記載されることもあり。Amélie Nothomb本人曰く、最後のbも発音してノトンブと読むのが正しいみたいですが、それを知っているのは近親者だけみたいです)
アメリー・ノトンは日本とゆかりのある作家で、日本で子供時代を過ごし、日本を舞台にした小説も書いています。特に、日本の会社で働く外国人を主人公に、日本社会の奇妙さをユーモアいっぱいに描いたStupeur et Tremblements(畏れ慄いて)はフランスでベストセラーになり、映画化もされました(この小説についてはまた紹介するつもりです)。
さて、今回僕が読んだCosmétique de l’ennemiの舞台はある空港の待合ホール。主人公のJérôme Angust(ジェローム・アングスト)が出張でバルセロナ行きの飛行機を待っていると、知らない男が話しかけてきて、奇妙な話し合いに巻き込まれていくという内容の小説です。全編を通して2人の会話だけで成り立っています。
個人的な感想を言うと、この小説の見どころ(読みどころ)は、アメリー・ノトンの話芸とブラック・ユーモア。知らない男を煙たがるジェロームと、なぜかジェロームと話をしたがる謎の男の機知に富んだ言い合いは、徐々に、そして巧妙に、その色合いと重さを変化させていきます。具体的にどのように変化していくかを書くとネタバレになるので書きませんが、かなりブラックな方向へと変化していきます。
謎の男の物語を受け取る主人公の意識の変化は、読み手であるわたしたちの意識の変化でもあります。この小説を読むと、それがアメリー・ノトンの語りによって精妙にコントロールされているという感覚があってとても面白かったです。
僕の調べたかぎりCosmétique de l’ennemiの邦訳はでていませんが、フランス語はそれほど難しくないので中級レベルくらいの人にもおすすめです。物語がすべて会話だというのもいいですね。
この機会にいかがでしょうか?
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